引子:海を聞く#
横になって海の波を聞くと寂しくはない、
真っ赤な黎明が噴き出そうとしている。
海燕が空を突き破って落ち、
重囲に向かって雨の中を一蓑で駆ける。
横たわる線路#
踏切の外は草木が深く、
寒風が春と夏を分ける。
再び一年が激しく揺れ動き、
線路のそばには当時の人影は見えない。
意が平らにならない#
騒がしい湖の雨が止むことなく、
波涛が影を映し出し明月が明るい。
灯火を点けて巻物を持って行き、
目を閉じて眠りに入るが意が平らにならない。
終章:咆哮#
雨が林の葉からまばらに漏れ、
足音が零れ落ちて声を収める。
とりあえず座って雷の後を待ち、
雷鳴が瞬間に千秋を響かせる。
完。